『賽銭箱』【怖い話・中編】【怖さ6/10】
文章書くの下手ですまん、思い出話なんやけど
かなり昔で九州のどっかの島の壱岐だか対馬だかの話で、当時の親父のせいでその辺りの島行ったり来たりしてたから記憶がちょっと曖昧なんだけど…
そこで親父の弟の娘さんとか、近所の同年代の友達らと遊んでたんだ、当時は携帯ゲーム機でポケモンやらロックマンエグゼやら遊戯王カードとかもあったが屋外で遊ぶのがまだまだ主流の時代だったんだ。
暑い夏の日で俺らは林の中で土やら倒れた木を掘り返してカブトムシやクワガタ探ししてたんだけど、日が暮れるくらいの時間帯だったかな…その親父の弟の娘さん、長いから従姉妹ちゃんが突然
「賽銭箱がある」
とか言ってきて、気になって俺らもついていったんだけど。
まぁなんか、林の幾つかの木に太い縄が巻きつけてあって地面に置いてるデカい木の箱を囲ってあってさ
上から見たらまんま賽銭箱なんだけど、賽銭箱によくある小銭を滑らせて穴に入れるような仕組みでなくて、中身が丸見えで、それで中になんかあるのが見えてさ。
それをよく見たらアイスの棒切れみたいなのに変な印鑑押してあるのを変に並べてあって、昔のラムネとかコーラの瓶?みたいなのが6つそれを囲ってあってさ、中にやたら粘り気のありそうな変な液体が入ってたんだよ。
まぁ当時は近くの神社が捨てたんだろう、とか、鳥居に付いてるような縄で囲ってあるから賽銭箱も捨てる際のルールや儀式みたいなのがあるんだろうとか友達みんなで話し合ってあんまり触らないようにしようってなってさ、当時の俺らは日が暮れかけてたしそのまま帰ることにしたんだ。
んで、まあ、こっからわけわかんねーんだが、俺らが林を出ようとして、山を降って林の入り口にしてる場所にようやく到着した時
そこまで太くない木の影からなんか、古い着物?着てる長い髪の女が出てきたんだ。
ほとんど至近距離で。
俺や従姉妹ちゃんや友達は全員ビックリして
「ひっ!?」
って喉が引き攣った声を出した。
身なりとかが不自然だったとか、髪が凄く長かったのもあるけど、一番おかしかったのは俺たちが誰も気づかなかった事。
山登りとか林に入った人ならわかると思うけどその女が出てきた木がその人が木の影に身を隠すには細過ぎたんだよ、加えて林の中なら誰かが歩いてくれば絶対に視界に何かしら入ってくるけどそれも無かった。
だから俺たちは全員驚いて立ち尽くした。
その女の人が俺らを凄い目を開いて、なんて言うんだろうか…睨めまわすように順繰りに見ていたんだ。
凄い綺麗な顔の女の人が目をおっ広げて、まばたきすら忘れたように俺たちを凝視するんだ。
それで従姉妹ちゃんあたりまで一通り見終わったあとに笑顔になって
「———-」
って書くべきかな、音が出てなくて、声が声になって無くて何か、何を言ってるのかは不思議と理解できたんだよ(坊や達は今日は虫捕りしてたの?)(いっぱい捕れた?)(何が捕れたの?)て意味がいっぺん同時に伝わってくる感じ。
俺たちは全員おっかなびっくりして、中には何故か泣きかけのやつも何人かいてさ、でもやっぱり女同士だからなのかな。
従姉妹ちゃんだけが「いっぱい捕れたよほら見て!!」って俺たちの虫カゴを掲げて女の人に見せたんだ、そしたらその女の人が近づいてきて、また
「——–」
って、言ってさ、意味が(いっぱい捕れたねぇ)(もっと捕れるとこ教えてあげようか?)って言ってきたんだ。
俺たち、従姉妹ちゃんを除いてはその時既にこれは幽霊だ、頭のおかしくなってる人だと思っていたらしい。
でもその時もうみんな体が動かせなくなってたんだ。
女の人と従姉妹ちゃんは手を繋ぐと楽しそうに歩き出して林の入り口から再び林の中に入っていって、それで何故か俺たちもその後をついて行ったんだ。
当然俺たちの意思じゃない、誰が好き好んでこれから日が暮れる山の林の中に入りたがるか。
でも体が自然と二人を追って林の中に入っていくんだ。
この時点で俺が少し頭がおかしくなる。
怖くて頭の中では泣き出してるのに顔がその表情をしてくれない、身体は全力で逃げ帰ることも暴れる事もさせてくれずただ二人の後を歩くだけ。
それでも視界から二人が今何をやってるかは頭に入ってきてな。
女の人が指差したとこにクヌギやコナラの樹液に集まるカブトムシやクワガタがいてそれを従姉妹ちゃんが楽しそうに捕まえてあらかた獲り尽くしたらまた次の木にって感じだったと思う。
それが朝まで続いていたと思う。
気づいたら俺たちは浜辺で手を繋いで輪になってた。
輪の中心には虫カゴを持った従姉妹ちゃんがいて、俺たちはほぼ同時に体の自由が戻ってきたのを実感して「あっ」とか言って不思議そうにみんながみんな友達の顔を見回した。
従姉妹ちゃんは虫カゴ抱えて寝てて、
海を見たらまた日が暮れかけていて、朝くらいまでの記憶しかない俺はまた混乱した。
友人らに今あったことを確認しようとしたら
「おーい!!」
と大きめの漁船からの灯りが俺らに当たった。
俺たちは一斉に振り向きすぐさま漁船の方に一斉に走り出したのは覚えてる。
多分俺含め、ようやく助けに来たと思ったんだと思う。
そのまま漁船の人らが浜辺に寄り降りてきて
「こんなとこで何しとるとや?誰が連れてきた?」
と漁師のおじさんが厳しい口調で問い詰めてきた。
その時の俺たちは意味がわからなかった、俺たちが登った山の林は近隣の民家の近くだからこんなところ誰に連れて来られずとも来ることができる。
そう伝えると、
「何言っとるんだ?ここ内院島(のうじま)やぞ!?」
と逆に叱られた。
その後、船に乗せてもらって陸地まで送ってもらい警察が来た。
こっからさらに意味がわからなかったのが、俺たちが元いた場所から十数キロ離れた離れ小島にいたということ。
そして俺たちが家に帰ってこないとの事で三日前から捜索をしようかという段階になってた事だった。
俺たちは混乱や動揺しながらも今まであった事を集まった親や先生や警察に話した。
すると親たちだけが何か渋い顔をして話し込み始めて、先生らや警察はある程度話を聞いてから帰っていった。
俺たちは不安になりながらも三日間も餌も与えず、虫カゴに入れていたとは思えない元気なカブトムシやクワガタを見て、やっぱり三日も経っていたとは思えない、アレは誰?アソコはどこ?って会話をしてた。
アレから十数年経って、実家に帰省した時にあの時の件を飲みの席で親父に聞いてみた、すると親父から
「あの時お前らが見た箱は、本土の出雲だか諏訪の大きい神社からたらい回しにされてきたもんで、アレが結構な人を祟り殺すハメになったからコッチに送られてきたモンらしい、それ以上は知らん」
と言われた。
ただ、俺たちがそういう事件にあった後、当時の近隣の不良グループがその箱を倒したり小便を引っかけたなどをして精神病院に入ったり、刑務所に入ったり行方不明になったり、自殺未遂をしたらしい。
お前らが何も無くてよかったと言われた。
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