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『見張り』【怖い話・短編】

怖い話・体験

元スレ: 死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?185

【怖い話・短編】
【怖さ  7】★★★★★★★☆☆☆

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『見張り』【怖い話・短編】【怖さ7/10】

825: 見張り1/6 2008/01/06(日) 11:42:11 ID:qWo5uXEN0
何の脈絡も無いけど、俺も怖い思いをした事がある。

20年ほど前、T県にある国立大に通っていた友達のアパートへ
3人で引っ越しの手伝いに行った。U駅周辺やキャンパスの周辺は
そこそこ明るい感じだったが、そいつのアパートはK川を越えた
雑木林に有り、車のなかった俺達はバスで近くまで行き、そこから
歩いて20分も掛ったひどく寂しい場所だったんだ。

引越し屋の業者も帰り、4人で麻雀などをやりつつ酒を飲んだ。
当時タバコを吸っていたのは俺だけで、夜中になった頃タバコが
切れてしまった。
酒とジュース、つまみは豊富に有ったんだけど、タバコだけは無い。
自販機はないのか?と聞くと、例のバス停まで行かないと無いと言う。

外は真っ暗だった。文字通り足元も見えにくい程の闇。
(マジかよ~、嫌な感じだなァ)
時折有る街灯の周辺だけが微かに明るいだけの山道をトボトボと
歩いていると、公衆電話のボックスに出くわしたんだが、これが
何かおかしい。
普通なら明かりが点いているはずなのに、消えている。
(壊れてるのか?これ?)
立ち止まってボックスを除くと、電話機には電気が来ているらしく
赤い表示は点いている。

通り過ぎようとしたら、公衆電話の隣に立ってるゴルフ場のデカイ
看板の後ろに男が立ってジッとこっちを見ていた。

826: 見張り2/6 2008/01/06(日) 11:42:54 ID:qWo5uXEN0
思わず(うぉっ)って小さく声を上げてしまったんだが
愛想笑いをしつつ軽く会釈をして俺は通り過ぎた。

(こんな真夜中に、あのオヤジ、何やってるんだろう?
気持ち悪いなぁ)

と思いつつ歩いて行くと、森の中に分かれ道が有って
『○〇の里』とか『○○の家』だかもう
思い出せないけど、白い看板が立っていて、来る時は全く気付
かなかったバリケードが置いて有った。道の奥は森の中に
消えていて先は全く見えなかった。別荘でもあるんだろうな。

やっとバス停まで出ると、田舎のバス停に良く有る雨除けの
しょぼい屋根の下に中年の女が立っていた。

(もう、バスなんか来ねえだろ?何で居るんだろ?)

中年の女は俺がタバコを買うのをジッと見ていた。

戻って来ると例の別荘らしき白い看板の前に車が1台停まっていた。
軽トラって言うのか、小さい荷台がある、よく田舎なんかの農家の
人が乗っている様なアレ。
どう見ても3人がやっと乗れる様な車なんだけど、4,5人位の
男と2人程の女が周りに居る。
真夜中だろ。それにこんな真っ暗な中でお互いに人が出会ったら
黙って通り過ぎるのも何だから、と思った俺は
『何かあったんスか?』と声を掛けずにいられなかったんだ。

827: 見張り3/6 2008/01/06(日) 11:43:32 ID:qWo5uXEN0
すると若い女が「道に迷ったみたいで」と言った。
「助けてくれます?こちらに住んでるんでしょ?」
となれなれしく笑って言った。
『俺、地元の人間じゃないんで分からないけど、バス停の有る国道
ならあっちの方ですよ』と言うと、もう一人の若い女が
「じゃあ、そこまで一緒に車で」と言う。

よく見ると女の着てる黄色のジャージは、マダラになってて元は
白い物が汚れてしまった感じだし、車の中には赤ん坊が居る様だった。
車の中には生ゴミの袋が有って、赤ん坊はその中で泣いていた。
酷い悪臭がした。

(冗談じゃねえよ、こんな気持ちの悪い奴らの車なんて)

『ここからなら真っ直ぐだし、ちょっと帰る家も遠いので・・』
と何とか断ってその場を去ると、連中は「じゃあ、また」と言った。

例の電話ボックスまで来ると、さっきの男が今度は電話ボックスの
中に立っていて、電話もしないくせにジッと俺を見ていた。

アパートに帰った俺は、さっきの事を皆に話した。
「なんだ?そりゃ」とか「よっしゃ、見に行ってみるか?」とか
チョッと盛り上がって、ほんの30分もたたなかった時だった。

玄関のブザーが鳴った。

828: 見張り4/6 2008/01/06(日) 11:44:11 ID:qWo5uXEN0
玄関で友達が受け答えしている。
「はあ、U大生です・・」「ええ?そう、友達と一緒ですけど・・」
とかボソボソ聞こえてきて

「そう、今日引っ越してきて・・」「え?もう貸してない?」
とか言ってる。

『何だ、何だ。どうした?』俺達3人も玄関へ行ってみた。

よく田舎に居そうな、帽子を被った年配の見るからに農家の人
みたいなオジサンが玄関で友達と話している。
外には、電話ボックスの男と、バス停の中年の女も居たのでびっくり。

農家の人みたいなオジサンは、このアパートの大家だと自己紹介
し、外に居る男と女は息子さんとその嫁さんだと説明した。
オジサンが「さっき、タバコ買いに行った人居なかった?」
と言うので友達が俺を見る。

(ははぁ、未成年者のタバコと思ったんだな。それでワザワザ文句
言いに夜中に来たのか。まったく田舎はうるせえ奴が居るんだな)

単純にそう思った俺は、運転免許を出して説明してやろうとすると
中年の女がヒョイッと顔を出して
「そうそう。このお兄さんよ。大丈夫だった?」と言い
電話ボックスの男が「別荘の処に変な人が居たろ?」と言った。

829: 見張り5/6 2008/01/06(日) 11:44:48 ID:qWo5uXEN0
イチャモンどころか何か心配してくれてる様な雰囲気に
拍子抜けした俺達に大家のオジサンが話してくれたのは
だいたい以下の様なことだった。

以下は大家さんの話。

“このアパートは五年前くらいに建てて、U大生をメインに貸して
いた。ある時住人の学生が一人、頭が変になってアパート中の
人に夜中だろうとお構いなしに訪ねて行っては、話を聞いてくれ
と言う様になった。当然住人からはクレームが出た。
そいつは卒業してアパートからは出て行ったんだが、就職せず
親元へも帰らずU市付近に住んでしまった”

その学生には得体の知れない仲間もいて、あちこちに現れては
迷惑を掛けている。その一つにU大の学生名簿を使った物が
あって一人暮らしの学生に話にやって来るのだという。
俺はピンときた。『それ、ネズミ講じゃねえの?』

その頃は、マルチ商法とかの名前は無かったが、卒業生などの名簿
を頼りに何かを売りつけて会員とかにする、ネズミ講と呼ばれる
商売は確かに有って、そういった奴は皆から絶交されていた。

830: 見張り6/6 2008/01/06(日) 11:47:22 ID:qWo5uXEN0
『あいつ等ネズミ講だよ。あの別荘がアジトなんでしょ?』
俺達がそう尋ねると、大家さんは言った。
「あの別荘はもう無いよ。解体されて今は更地だよ」

実は、このアパートには学生だけが住んでいたのだが、例の
おかしな学生の仲間の生徒が段々増えてしまい、不動産屋に
頼んで連中には引っ越しを頼んでいる。最後の住人が出て行ったら
ここは閉鎖する予定なのだそうだ。
連中が仲間を呼び込んでは困るので、毎晩定期的に見張りに来ている。
それで、引っ越しのトラックを見掛けたので、様子を見てたら
何か様子が違うので心配になって来たのだという。

大家さんは怖い顔で友達に言った。
「ここのアパートは、誰に紹介されたの?」
『そうだよ、お前。ここはやべえぞ』と俺が言うと
友達はいきなり大声で言った。

「ち が う ん だ よ。 お れ た ち は !」

唖然とする俺達に、そいつは口から泡を飛ばしながら叫び続けた
のを今でも覚えている。狂人ってのは多分ああいうのを言うんだろう。

「金儲け、金儲けとか言うなぁぁ!俺達はそういうのじゃないぃぃ!」

半狂乱のそいつを残して、俺達3人は大家さんの車で駅まで行って
ホテルに泊まり、翌朝帰った。そいつとはそれ以来二度と会ってない。
当時は新興宗教とかカルトなんとかの話題も聞いた事はなかった。
例の某教団が流行る前の事だ。今から調べても某教団がT県のあの辺り
で活動していた記録はない。

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