【怖い話・短編】
【怖さ 6】★★★★★★☆☆☆☆
『夜泣き』【怖い話・短編】【怖さ6/10】
幽霊は出てきません。
現在進行形の話です。
ここ最近ほぼ毎晩、赤ちゃんの泣き声と、それをあやす母親の優しげな声が聞こえてきます。
僕の家の真向かいは小さな公園でして、
きっとどこかご近所のお母さんが夜泣きを静めるために、夜風にでも当てに来ているのでしょう。
実は僕自身、妻が妊娠中なので、迷惑に思うどころか親近感すら抱いています。
妻も母親になる自分と重ね合わせているのか、
「今日も来たね~♪」とか、楽しみにすらしている様子でした。
で、昨日です。
僕が仕事から帰ると、妻が泣いてました。
以下妻の話しです。
昨日は久々に友達に会った妻が10時くらいに帰宅すると、公園には例の母子。
ベビースリングに赤ちゃんをくるみ、抱っこしながら優しく微笑み語りかけていたそうです。
それはもう愛情にあふれた様子で。
すっかりファン(?)になっていた妻は、まあやはり話しかけてみたそうです。
「大変ですね~」とかなんとか。
でも全く反応がない。まるで認識されてないかのような無視っぷりで、ひたすら赤ちゃんに話しかけている。
そればかりか、近くでみるとこのお母さん、えらいやつれた人で、微笑みにも生気がない。
妻の表現を借りれば、『死にそうな人』だったとのこと。
止めときゃいいのに妻、さらに食い下がり、
「私ももうすぐ産むんですよ」
すると女は妻に向き直り、生気のない目でじっとりと睨んできた。
しばらく無言で睨むと、今度はおもむろにスリングを外し、中の赤ちゃんを妻に投げつけてきた。
妻は慌てて赤ちゃんを受け止める。
何かが違う。固い。
人形だ。赤ちゃんは人形だった。
妻が驚いて人形を落とすと、今度は泣き声が聞こえた。
人形からじゃない。
女からだった。女が赤ちゃんの泣き声を真似ていた。
いつも聞こえていたあの泣き声だった。
以上。妻の話です。
妻はその後慌てて家に戻り、僕の帰りを待ったわけですが、アホかと。
公園真正面なんだから、すぐ帰ったらウチがバレるだろーがと。
と言いたいけれども、怯える妻にそんな事言えず。大丈夫大丈夫って言ってます。
でも昨日僕が帰って来るとき、いたんですよね、ウチの前に、その母子。僕すげー見られてましたもん、そういえば。
で、今日も外からは相変わらず聞こえて来ました。
怖いです。
僕はどうしたらいいのでしょうか・・・
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